■椅子選び
 
椅子選びで、まず重要なことは、椅子を選ぶ際には実際に三十分ほど座ってみること。
なぜなら、良い椅子とは長時間使ったときに「身体に良い椅子のこと」です。
最初に座ったときの「第一印象」の座り心地で選んでしまうと、失敗する可能性が高くなります。椅子を選ぶためには、とにかく最低30分は座ってみる。これが鉄則です。
そのうえで、椅子を選ぶためのチェックポイントは次の7点です。
 


1.クッションの硬さ→柔らかいものは避ける。
2.座面の高さ→調節可能なものを選ぶ。
3.座面の奥行き→身体の大きさや背丈にフィットしたものを。大きな椅子で奥行きがある椅子は小柄な女性は特に気をつける。
4.座面の水平度→水平もしくは、膝に向かって少し下がる椅子(前傾)を選び、お尻側が下がり膝側が上がる椅子(後傾)は避ける。
5.肘掛け→肘掛けのあるものを選ぶ(ただし、机との関係で肘掛けが邪魔になるケースもあるので注意)。
6.デスクとの関係→椅子の肘掛けが机にぶつからないよう、高さを考慮する。
7.デザイン→重視しすぎて、座り良さが二の次にならないように気をつける。
 
結論としては、以上の条件を満たしていればいい椅子であるといえます。但し、気をつけて頂きたいのは、誰かが良いと言っている椅子が自分に合うとは限りませんので、人の意見には惑わされずに実際に自分で座ってみることをお薦めいたします。
 
ショールームで、椅子を試すことができる場所もあります。以下参考まで
 
株式会社プラス赤坂ショールーム : http://www.plus.co.jp/showroom
株式会社岡村製作所ショールーム : http://www.okamura.co.jp/guide/showroom
株式会社イトーキ ショールーム : http://cs.itoki.jp/tokyo/
 
■軽視されている「椅子と机の関係」
 
前述の椅子選びの六つのポイントの一つに、「デスクとの関係→椅子の肘掛けが机にぶつからないよう、高さを考慮する」というものがありました。
現在の仕事環境では椅子に座って、机の上に置いたパソコンを操作するとい動きが作業の大半を占めるはずです。そのため、椅子単体の機能や形状だけではなく、「椅子と机との関係」もとても大切です。
会社のオフィスでは、身長百五十センチ以下の小柄な方から、百八十センチを超える大柄な方まで、さまざまな体型の人が働いています。にもかかわらず、現状ではオフィスで一律に同じサイズの机と椅子が与えられているところが多いと思われます。
 
それどころか、そもそも一般的に市販されている机のサイズはかなり画一的で、高さ七十二センチ〜七十四センチのものが多いのです。同様に、椅子についても座面までの高さは、四十二・五センチ〜四十三・五センチ、上下九センチの幅で調整できる、というものが主流です。残念ながら、使う人の身長差、体格差を考慮した製品が供給されているとはいいがたいのです。
椅子の場合と同様、オフィスに並んでいる机が高かったり低かったりしては見た目におかしい、という固定概念も根強いのでしょう。コストの問題もあって、たいていの会社は机の高さを揃えているのが現状でしょうし、そうなると売る側が画一的な商品しか作らないのも当然です。
 
とはいえ、椅子と机の関係や身体への悪影響が軽視されているのは、やはり大きな問題です。
「椅子と机の関係」が座る人の障害の原因になりやすいケースとして、具体的には次のような場合があります。
 
1.小柄な人が、「机が高い」と感じているケース
 
この場合、椅子に座って作業をしているときに、机の高さに合わせて自然に肩があがり、首こりや肩こりといった障害の原因になります。
そこで、対処法としては肩があがらないように椅子の高さを上げて調整するのがいいでしょう。また、小柄な方が椅子を高く調整するとどうしても足が浮いてくると思われますから、その場合には台を置いてしっかりと足を付けられるようにすることも重要です。
 
2.小柄な人が、「座面の奥行きが深い」と感じているケース
 
簡単にいうと、まともに背もたれに寄りかかると足が浮いてしまう状態のことです。当然、机との距離も遠くなってキーボードやマウスに手が届きません。仕方なく、この場合には「チョコン座り」や「スフィンクス座り」を選択せざるを得なくなり、腰をはじめとする各部位に負担をかけるわけです。
対処法としては、背もたれに大きめのクッションを置き、背中と背もたれの「すき間」を埋めて腰の負担を軽減させるのがいいでしょう。
 
3.背の高い人が、背中を丸めて机の高さに合わせているケース
 
身長の高い人がパソコンの画面に目線を合わせるためには、上体を曲げるか、倒すかしなければいけません。この場合、背中座りやねこ背座りの原因になります。いずれも椎間板ヘルニアなどの重篤な障害の原因になるので早期の対策が望まれます。
対処法としては、パソコンの下に台などを置き、目線があがるように工夫するのがいいでしょう。
 
4.机に肘掛けが当たり、椅子を机の中にしまえないケース
 
もともと肘掛けの設定が高い椅子を使っている場合や、一の対処法で椅子を高く調整した場合にありがちなケースです。この場合、机に肘掛けが当たり、椅子を近づけて座る事ができなくなり、机との距離が遠くなります。結果、ねこ背座り、背中座り、スフィンクス座りの座り姿勢をとりがちになり、さまざまな障害が生じます。
このケースの対処法としては、肘掛けを外してしまうのが一番です。どうしても取り外しできない椅子であれば、②の場合と同様に、背もたれにクッションを置き、少し椅子の前のほうに座って作業してください。
ちなみに、以上の対策をとる場合には、必ず「丹田座り」をしてみて、その状態で机の高さや椅子の高さを合わせてください。「丹田座り」をした際に足が浮く、背もたれとの間が空く、背中が丸めないと机に手が届かない……といった問題が生じた場合に、1〜4にある対処法を講じるということです。
 
■正しいパソコン姿勢ができるデスクまわりの特徴
 
ここまでに説明した椅子の選び方、机との関係を踏まえたたうえで、正しい座り姿勢をとるためにはデスクまわりの環境をどのように整えればいいのか。全体像を確認してみましょう。



①パソコンの位置
 
正しい座り姿勢をとりやすくするためには、パソコンを正しい位置に置くことがなんといっても重要です。
まずは、パソコンは必ず身体の正面に置くこと。これが基本です。そのためには、机の上の整理整頓が必須です。
また、たとえ机上が整理整頓されていたとしても、机の下に引き出しがある場合は、机の真ん中で作業ができない場合があります。その場合は身体の正面にパソコンがくるように、机の端にパソコンを置くようにしたほうがいいでしょう。とにかく、身体を捻ったり、斜めになったりしてパソコンを作業することがないようにします。
 
最近はマルチディスプレイのパソコンを操る人も少なくありません。この場合はキーボードの位置を正面にして、左右の画面を見るときは、顔を動かすようにします。キーボードが二台ある場合は、椅子の回転を利用して、その都度使うほうのキーボードが身体の正面にくるようにしましょう。
 
ディスプレイの高さも調節が必要です。ディスプレイを見るとき、目線は平行から下五〜十度の範囲になるようにします。
さらに、キーボードの位置は座ったときの肘の角度を九十五〜百十度にしたとき、ちょうど手がとどくように置きましょう。
ここで問題になるのがノートパソコンの場合です。ディスプレイとキーボードがつながっているので、いまいったような位置関係にディスプレイとキーボードを配置することができません。そこで、外付けキーボードをつなげたうえで、ノートパソコン本体は台の上にのせ、目線を先ほどの平行から下五〜十度の範囲になるような高さに調整します。
 
②書類などの配置
 
書類を見ながらパソコンを操作する、という作業は日常的によくあるものです。そのとき、キーボードの手前に書類を置く人は多いと思います。これが一番やりやすいし、仕事もはかどると感じるようです。
しかし、この姿勢は肩があがったり前にいったりして、首・肩の障害の原因になってしまいます。書類が手前にあるぶん、キーボードは遠くに置くことになるからです。
 
前述したように、キーボードへの距離については、守るべき目安があります。座ったときに肘の角度が95〜110度になる位置にキーボードを置くのです。 そうすると、キーボードの手前には書類を置く余裕はなくなるはずです。
では、書類はどこにおけばいいかというと、キーボードの左右に置けばいいのです。それも、位置をときどき変えて、左右交互に置くといいでしょう。身体の偏った使い方を防げます。机の奥行きがある場合には、キーボードとディスプレイの間に書類を置いてもいいでしょう。
このように、キーボードの周辺に書類を置けるスペースを確保しておくためには、机の上がかたづいていなくてはいけません。正しい座り方を実践するためには、まずは机の上の整理から、ということです。
 
③デスクの下(足まわり)
 
足は、地面にしっかり着地したときに、膝の角度が九十〜百度になっているのが基本です。「地に足がついている」ことは正しく座るためには必須の条件です。
さらに、疲れたときには膝下を曲げたり、伸ばしたりが可能なのが理想です。第三章で説明したように、下肢は血流が滞りやすく、それゆえにむくみやすいので、適宜動かして血流を改善させられるだけで、ずいぶん楽になるのです。
 
ところが現実には、机の下には書類の入ったダンボールや置き傘、ゴミ箱などがごちゃごちゃと置いてあって、足を伸ばすスペースがろくにない、という人も多いのではないでしょうか。そのため、いつも膝を深く曲げて座っているという方もいるでしょう。
これは来院された患者さんの例ですが、足がむくむからと、机の下の書類にいつも足を乗せているという方もいました。これは、足の位置が高くなってむくみにはいい面もありますが、腰に負担をかけてしまいます。実際、この患者さんは慢性的な腰痛に悩んでいる方でした。
しっかり座るための環境づくりの一貫として、机の上と同様、足元も整理整頓を心がけましょう。
 
引用資料:その痛み・不調は、「座り方」を変えれば消える! (PHP文庫) 木津直昭著
copyeight behavioral posture research Society
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