理想的な歩き方

文責:木津直昭
 
正しい歩き方は、正しい立位姿勢が基本にあります。いくら正しく歩こうと思っても基本の立位姿勢が間違っていれば、当然、歩き方は崩れてしますのです。
はじめにその立位姿勢について説明いたします。
左図は、立位での重心線を表しています。
 
ここで大切な重心線ですが、体重の重さを床から反発する力のベクトル方向によって決められます。その結果、床が斜めだったり、柔らかい絨毯上では重心線は変わってしまうのです。(*ニュートンの第三法則より)
 
また、人間の各関節は球状をしている物が多く、安定性には適していません。多くの場合、関節の安定性は靭帯や筋肉がその役割を担っています。
 
静止立位時の床反力ベクトルの作用線は、下から
 
・足関節の1.5〜5センチ前方
・膝関節の前
・股関節のわずかに後方
・第4腰椎の1センチ前方
・頭部の中心(耳垂)
 
上記の立位姿勢が床からの力のベクトルを頭頂に伝える一番効率的な立位であります。

しかし、この理想的な立位を取らなければいけないかというとその答えはNOです。
なぜなら人間の骨格は各関節で柔軟に対応できるようになっています。ただ、その行き過ぎたバランスの崩れが痛みや障害の原因になる事を理解してほしいのです。
この正しい基本姿勢をもとに歩くのですが、歩き時に気をつけたいのが、身体の横揺れと縦揺れです。この揺れを最小限にとどめることができれば、正しい歩き方はできていると言っても過言ではありません。
 
そこで一般的な横揺れと縦揺れについて記載しておきます。
初めに縦揺れですが、人は歩いている時に上下に動揺しています。ローディングレスポンスとプレスイング時に最低になり、ミッドスタンスとミッドスイング時に最高となります。


この上下幅が2.5センチが平均的な数字です。(Perry 1992)
次に横揺れですが、左右に動揺する頭の位置とイメージして頂ければいいと思います。
この平均値は、左右に4.5センチである。(Inman 1981)
この揺れが大きい場合は、骨盤の前後左右に揺れて、片足での体重支持期での外側への動揺が大きい可能性があります。


そして、正しい歩行で忘れてはいけないのが、足裏のレセプターである固有受容器であります。
これは身体のバランスを足裏の皮膚感覚受容器を通して脳に伝達している、とても重要なレセプターなのです。この固有受容器が衰えたり、使っていないと、正しいバランス感覚では歩くことができず、転んだりよろけたりする可能性があるのです。
 
この足裏のレセプターは図のように踵部〜足先にかけて分布しています。
指の部分では、300mgからの圧の変化を感じることができ、その役目は特に足前部と母指に密に集中しています。(Bizzini2000)
正しい歩き方では、この親指に集中している受容器を使われています。
歩行時の初めの床から踵への接触を100%とすると、中足部では60〜100%(Grieve1984)
中足部外側部へは10%、親指にかかる圧力は最大で踵にかかっていた圧力の30〜55%にもなります。(Soames1985)
圧力が一番少ないのは、第5指で第3中足骨頭への圧力の半分に相当する。(Collis1972)
これらのことから、歩行時には踵から親指先への体重移動が必須となります。臨床の場でお見受けするのは、この親指への体重移動が上手く起きていないケースである。
 
結論:
正しい歩き方では、正しい立位姿勢から、頭の位置が極端に動揺せず、踵から親指先への体重移動がスムーズに行われていることが条件になります。
しかし、先ほども述べたように、人間の骨格は各関節で柔軟に対応できるようになっているので、行き過ぎたバランスの崩れが痛みや障害の原因になる事を理解してほしいのです。
正しい歩き方をする上で、当研究会で推奨しているのが「パワーハウスウォーク」です。
これは、パワーハウス筋群(横隔膜、多裂筋、腹横筋、骨盤底筋群など)を使った歩き方で身体の動揺を最小限に抑え、踵から親指先へのスムーズな体重移動を可能にします。
 
参考文献&画像引用元:
観察による歩行分析 :Kirsten Gotz-Neumann 著(医学書院)
 
*ニュートンの第三法則とは
作用・反作用の法則のことである。物体Aから物体Bに力を加えると、物体Bから物体Aに、同じ作用線上で、大きさが等しく、向きが反対の力がはたらく。
copyeight behavioral posture research Society
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